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読んだらけ

漫画に小説、読んだものの感想を書いていきます

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乙一「ZOO」感想 



「なんなんだこれは」
という文句が有名な、乙一の短編集「ZOO」

いわゆる「黒乙一」の作品であり、彼の作風を知るのに持って来いの作品だ。
全10編が収録されている。

私は文庫版を購入したので、その順に紹介していくことにする。


もちろん、ネタバレ注意

◆ZOO1

カザリとヨーコ
母親から一方的に虐待を受けるヨーコ。
双子の妹のカザリは何故か虐待をされず、母親と仲良く暮らしている。
そんな不条理の中で話は進む。

虐待という暗いテーマの中、健気に生きるヨーコに心を打たれる。
終始陰鬱な雰囲気なので残虐なシーンに目が行きがちではあるが、どんな時でも希望を見出すヨーコに私は感心した。
オチは単純明快。
正直読めてしまうが、そこに至るまでの絶望感は堪らない。
最後の「『おっしゃー』と思った」という文章は秀逸。

短編一編目にして、「乙一」を知ることの出来る素晴らしい内容だ。



SEVEN ROOMS
ある日突然、拉致監禁された弟と姉。
同じように人が監禁された部屋が計7つ。
一日に一回、監禁されて一週間経った者が殺されていく…。

「ZOO」の中で私が一番好きな作品。
ラストに近づくにつれ高まる緊張感。
読んでいて心臓が高鳴るのは久しぶりの出来事だった。

そしてバッドエンドともグッドエンドとも言えない後味の悪い結末。
とにかく面白い。一気に読破してしまう。
乙一、ここに極まり といった内容だった。



SO-far
平行世界の狭間に残された少年のお話。
父が死んだ世界と母が死んだ世界の仲介となる。

ちょっとオチは無理があるかなと思った。
「フリをしていた」では済まないレベル。
それまでの過程は面白かったので、オチで少し損をしている作品か。



陽だまりの詩
黒乙一の中に突如放り込まれた心温まるお話。
「もうすぐ死ぬ自分を埋葬して欲しい」という願いをこめられ作られたロボット「私」。
主人の手足となって働く中で、「死」とは何かについて考えていく。

オチは大変読みやすい。
しかし、ロボットが「死」という概念を理解し、主人の最期を看取る描写は必見。
怪作ばかりの「ZOO」だからこそ、より光って見えるメルヘンチックな作品だ。



ZOO
壮大な出オチ作品。
ジョギングから帰ってきたら死体の写真が入っていた!…まぁ俺が入れたんだけど。
という簡単な内容。

そこからはもはや狂人の備忘録。
「イイハナシカナー」という微妙な結末。
主人公のイカレっぷりは読んでいて面白いが、短編集のタイトルを飾る作品とは思えない。




◆ZOO2

「血液を探せ!」

ある日目を覚ましたら包丁が脇腹に突き刺さっていた!
けれどもここは山の中。
救急車が到着するまで、生き耐えることができるのか?

シリアスな展開かと思いきやコメディ調。
人の生き死にが懸かっているのに空気の読めない発言ばかりで思わず笑ってしまう。
ギャグとシリアスの融合は見事。
最後に本格的なミステリもしていたりと、意表をつかれる。
「ZOO2」の中では、異彩を放っていることもあって一番好き作品だ。



冷たい森の白い家
虐待される主人公。
死体で積み上げられて完成された白い家。

明るい展開も無く、結局主人公が人を殺しまくっただけで終わってしまう。
オチで笑えるのが救いか。
主人公に救いがなかったのが残念だ。



closet

乙一の放つ、上質ミステリ。
オチがわかったとき、何回も読み返してしまった。
見事に「やられた」作品だ。

ミステリとして出来は申し分ないが、もう少しオチを衝撃的にできなかったものか。
「三人称が実は一人称」だったということをもっとアピールしていいはず。
あれじゃ気づかない人も多いんじゃないだろうか。



神の言葉

ドラえもんの「独裁者スイッチ」のようなお話だ。
生き物に対して心をこめて言葉を放つと、その通りになってしまう。
大抵こんなチート能力を持った人は懲らしめられるのだが、この作品も例に漏れない。

自分以外は作られた幻想。
そして、自殺も出来ない。

という現実を突きつけられた時の絶望感。
合掌…。

自分が主人公の立場だったら…と思うと泣けてくる。
どん底に突き落とされる一作だ。



落ちる飛行機の中で

ハイジャックされた飛行機の中、主人公は隣の席の営業マンに安楽死の薬を買わないかと持ちかけられる。
墜落して苦しんで死ぬか
墜落する前に薬を飲んで痛みを感じずに死ぬか
しかし、ハイジャックは失敗に終わる可能性もある…。

非常に面白いテーマである。
主人公と営業マンとの場違いな駆け引き、ハイジャック犯との交流。
シリアスコメディとして「血液を探せ」に通ずるものがある。

序盤は見事に物語に惹きつけられたが、終盤が微妙。
最後はしっかり決着をつけて欲しかった。
消化不良のようで腑に落ちない。




読み終わってみれば、結局乙一ワールドに入り込んでいたことに気付く。
このうえなくバラエティ豊かなラインナップ
上述のとおり、「乙一」に始めて触れる方にはうってつけの作品。
シリアス、ミステリ、ブラック、コメディ、メルヘン
様々な要素が積み込まれている。

ひときわ光るものが多い、魅力のある作品だった。




ZOO
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category: ミステリー(和)感想

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tag: 乙一 
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倉知淳「星降り山荘の殺人」感想 



騙されたの声続出」「初心者にも玄人にもオススメ」と書かれた帯を見かけ、前々から気になっていたのでついに購入。
私の大好物なクローズドサークルものというのも大きかった。

ひとまず簡単なあらすじ紹介
雪に閉ざされた密室での推理を描く本格推理小説。電気も電話も引かれていない山荘のコテ-ジで男が殺された。犯人は残った人の中にいる! 「スタ-ウォッチャ-」星園詩郎の華麗な推理のゆくえは?
挑戦的な文面が異様さを放つ、読者と作者の真っ向勝負!



まず、この小説の特徴は各章の最初に挟まる挑戦的な文面であろう。
ワトスン役が登場する。もちろん、犯人では無い
この章では重要な手掛かりが出てくる。見逃さないように
などなど、助けてくれているのか馬鹿にしているのか分からない記述だ。

もちろん、この文も謎を解く鍵になるので、見逃さないように。


雪に閉ざされた山荘という、好きな人には堪らないシチュエーションの作品。
しかし、物語は淡々と進み、あまり緊張感が無かったというのは残念でならない
クローズドサークルの魅力が半減されてしまっている。

登場人物も感情の起伏に乏しく、同じような反応、行動を繰り返すばかりだ。
語り手もあまり事件に関心が無いし、謎を解こうと奮闘する「スターウォッチャー」星園も謎だらけであまり感情移入ができない
読んでいる間はただひたすら、一人で謎を解くという孤独感に襲われる。


帯には「寝不足覚悟の面白さ!」と謳ってあったが、正直ダレる。
コタツで蜜柑を食べながら読んでいたせいか、途中で二、三回寝てしまった。
それほど物語自体には動きがない。


だが、それを補うほどの、壮絶なトリックだということは間違いない
無論、私は騙された
真相がわかった時には純粋に「やられた」と感じて思わず笑ってしまった。
今までにない、新しいタイプのトリックである。
「驚き」を純粋に楽しみたい人にはかなりオススメだ。



このトリックは「アンフェア」という人もいるだろうが、手がかりは明確に提示されているので「フェア」と言うべきだろう。
これ以上触れるとネタバレになるので後述する。


「玄人にも初心者にもオススメ」とあるが、ミステリをある程度知っている方が楽しめる気がする。
物語全体で見るとおぼつかないが、トリックという一点で見ると素晴らしい作品だ。
未読の方は是非とも途中で飽きず、最後まで読んでいただきたい。



ここからネタバレ感想
未読の方は注意願います
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有栖川有栖「46番目の密室」感想 



いわゆる「作家アリスシリーズ」の第一作目。
私はこういう連作は最初から読みたがるタチなので、これが作家アリス初体験ということになる。
有栖川有栖は「マジックミラー」以来の二作目。

ようやく近くの書店が入荷したので買うことができた。
田舎なので有栖川作品を全く置いていないので困りものだ。


まずは簡単なあらすじ

45作もの密室トリックを発表し、日本のディクスン・カーと称されている推理作家、真壁聖一。
クリスマスの日、真壁に招かれアリスと火村は軽井沢の別荘を訪れる。
「密室ものは次で最後だ」と宣言した真壁は、その日の深夜、密室の部屋で死体で発見される。
彼は自身の「46番目のトリック」で殺されたのか?
作家アリスと探偵、火村が活躍する第一作。



推理作家有栖川有栖と、犯罪学者火村英生が活躍する。
基本的にはワトスン役のアリスの一人称で話は進んでいき、犯罪学者火村の名推理を聞くことになる。


率直に思ったことを述べると、タイトルや物語で密室を煽っていながら、密室の重要度はかなり低い
密室を突破すれば物語の謎が解けるという訳でも、真新しい密室トリックということでもない。
作者は「カーとクイーンの融合体」を目指したと語っていた。
そう、確かに、確かに見事に二人の作風がブレンドされていると思う。
しかし、ブレンドされているのはいいものの、どれも中途半端
1+1」ではなく、「0.5+0.5」なので、何か物足りなく感じてしまう。

それが唯一、残念でならない事であった。


「密室」で期待させられて残念という気持ちはあるものの、肝心の内容は素晴らしい出来。
事件の奇怪さ、各所に張り巡らされた伏線のおかげで、退屈することなく読むことができた。


また、ワトスン役のアリスの役割も面白さを際立たせている。
凡人」であるほどワトスン役は光るのだが、このアリスはまさに理想の「凡人」である。
自分なりに推理はするものの、探偵に一蹴される様は読んでいて爽快だ。

また、「アリス目線」で物語が進むことで、より感情移入ができる。
ワトスン役が「凡人」であるということは、我々読者に一番近い人物だということだ。
その「凡人」目線で話が進むことにより、火村の凄さを深く知り、事件の異様さを実感することができるのだ。


トリックの解決はクイーン式の論理に論理を積み重ねた鮮やかな論法。
私は完敗だ。
あれこれと考えてみたものの、全く的外れにも程がある。
名探偵になれるのはいつの日やら。

最後に、惜しいと思う点を挙げるとするならば、動機が弱く、推理できないということだ
新本格では動機の面は軽視されがちなので、仕方ないといえば仕方ないのだが。


ミステリ初心者、というより有栖川初心者におすすめの一作。
とは言っても私もまだまだ有栖川初心者なのだが。
シリーズの一作目がこの作品というのも良い。
これから「作家アリスシリーズ」をチェックせずにはいられなくなるだろう。

次作「ダリの繭」や、「学生アリスシリーズ」も気になってきた。



新装版 46番目の密室 (講談社文庫)
ダリの繭 (角川文庫―角川ミステリーコンペティション)
綾辻行人と有栖川有栖のミステリ・ジョッキー(1)

category: ミステリー(和)感想

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tag: 有栖川有栖 
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綾辻行人「暗黒館の殺人」感想 



原稿約2600枚、文庫本にして4冊という大ボリューム。
綾辻行人館シリーズ第7弾、「暗黒館の殺人」。
シリーズの集大成ともいえる巨作だ。

この厚みに読む気すら削がれてしまいそうな一作だが、私は二週間かけて読破することができた。
その二週間の軌跡をここに書き記していきたい。



まずは簡単なあらすじ

九州の山深く、湖の小島に建つ黒一色に塗られた館、暗黒館。
当主の息子・玄児に招かれて訪れた学生・中也は、「ダリアの日」と呼ばれる宴に参加する。
その翌日、使用人が遺体で見つかった…。
18年前の惨劇との関連は?「ダリア」とは何者なのか?
時間と視点が交差する特大巨編。



まず長い。
これだけで大きなマイナス要素である。
何故ここまで長いのか、不思議で仕方がない。
この長さに意味はあるのかと聞かれたら私はこう答えよう
「特に意味はない」
本当にただ、極限まで薄めたカルピスとしか言いようがない。

必要ではない描写が多過ぎる。
登場人物もわらわら。
登場人物紹介を見たときは唖然としてしまった。
でも家系図を見るとワクワクしてくるのはミステリ好きの運命であろう。


それでも、いざ読み進めてみるとスラスラページを捲ることができる。
やはりこれには綾辻氏の描写力、構成力の大きな力があってこそなのだろう。
まぁ、私の場合は「怪しげな館」さえ登場してしまえば物語に引き込まれてしまう。

そして面白いのが「視点」だ。
この物語の要と言っても過言ではない。
気せずして騒動に巻き込まれていく「中也」と呼ばれる青年。
「呼ばれる青年」とのうがミソである。怪しさ満載である。
暗黒館に単身向かうことにした「江南」。
一夜限りの冒険のつもりが、一生に一度の稀有な体験となってしまった「市郎」。

三者の視点で物語は進んでいく。
だが、「中也」と呼ばれる青年の視点が中心。
ほかの二者はおまけ程度。

視点がコロコロ変わる作品は数あれど、これほどまでに視点の変更を強調する作品は珍しいだろう。
もちろん、この視点の移動こそが物語の謎を解く鍵になってくる。
私は解けなかった。
残念極まりない。


そして、今までの「館」の影が見受けられるのも一興。
藤沼氏の絵画や、黒猫などなど…。
シリーズの集大成と呼ばれる所以はここにある。
このシリーズの核心ともよべるものにも触れる一作だ。

シリーズのファンとしてなら読んでおくべき作品であろう。
しかし、肝心の結末が…あまり良い出来とはいえない。
少々アンフェアな部分があったり、偶然で済んでしまう事柄が多すぎたり。
ミステリーとしての出来はイマイチと言わざるを得ない。

中村青司を巡る「館」が好きな人は文句なしに満足できる作品。
しかし、綾辻行人の「館シリーズ」として、ミステリーを期待する人にはオススメできない。


さらに探偵役の島田潔も最後にひょっこり登場するくらいで、いつもの「館ミステリ」を楽しむことはできないだろう。
この長さの物語を辛抱強く読んできたのにこれは無いよ、という声が非常に多い。
まだ長く無ければ、この作品の評価は違ってきたかもしれない。

「すごく暇だ」
「ウホホのホイ」
という方にはオススメ。
シリーズ好きで読んでない方は、辛抱強く読んでみてもいいかもしれない。



ここからはいきなり物語の核心に触れます
未読の方は全力で回れ右を


まず、島田潔のワトソン役として活躍してきた江南君と、事件発生時の江南君は別人という話。
これには綺麗に騙されたと言うしかない。
一時は別人にすり替わっていると想像したものの、「江南=別人物説」を否定する描写が多くあったため、早きに捨てるしかなかった。

そしてこの「江南=別人物説」を否定する描写が、あまりにも出来すぎている。
偶然に偶然の積み重なりで、「そう導かれるのは当然のことだった」と、ファンタジックな発言までしてしまっている。


もちろん、本物江南の視点と、事件発生時の各々の視点で齟齬が発生していることには気付いていた。
「あれ、江南君のときはああだったのに…?」
と何度思ったことか。

しかし、そんなことは読み進めているうちに忘れてしまった。
それもそのはず、この作品は長いのだ
そんな細かいことはすぐに忘れてしまうほど長い。
むしろ忘れさせるためにここまで長くしたのではないだろうか。
これぞ本当の「読者対作者」の具現化である。
物語の中で起きる矛盾点を、あえて物語を長くすることで忘れさせてしまう。
とんでもねぇ。


さらに一族の真相も謎が解ける度にとんでもない形相に。
「実はあいつはあいつの子ではない」
「お前の実の父は私だ」
のラッシュは笑ってしまうほどだった。

「人間が書けない」と言われる本格ミステリに於いて、複雑な人間関係に悩む人々を描きたかったのだと思う。
しかし、肝心の犯人の犯行動機がアレではダメだ。
「人間が書けない」と言われも仕方がない。


そして「中也」の本名は中村青司。
この物語が33年前の出来事だと発覚した時点で気付いた方も多いだろう。
暗黒館で度々登場していた「影」は、実は「元ネタ」だったのだ。
ここから青司は様々な奇妙な館を作り続けることになる。

物語の「出発点」的役割も、この作品は担っている。
シリーズが完結した後に読んでみても面白いかもしれない。



暗黒館の殺人(一) (講談社文庫)
暗黒館の殺人 (上) (講談社ノベルス)

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島田荘司「暗闇坂の人喰いの木」感想 



さて、本日は「異邦の騎士」に引き続き御手洗が活躍する「暗闇坂の人喰いの木」の感想を書いていく。
実際に読了したのは2週間ほど前なので、少し曖昧な部分もあるがご容赦していただきたい。


まずは簡単なあらすじ
古くはさらし首の名所だった樹齢二千年の大樹。通称「暗闇坂の人喰いの木」
戦前にはこの巨木が人間を呑み込んだという実例まで存在する。
そして現代、またもこの大楠が人間を死に追いやってしまう。
あまりに現実から離れたこの怪事件に挑むのは御手洗潔。
事件の真相に迫るにつれ恐怖におののく御手洗。
その驚きの真相とは?



この作品の主人公は、あらすじにもある通り樹齢二千年の大楠だろう。
館ミステリと同じく、人間ではなく「もの」そのものが登場人物を謎の世界へと導いていく。
この大楠を中心に物語は進んでいく。

この作品を読み始めるときに私は少し戸惑ってしまった。
なんといっても厚いのだ。
果たして最後まで集中を切らさず読めるのかとのたまったものだ。
しかし、そんな心配はもちろん杞憂に終わることになる。

なんといってもこの大楠だ。
一番キャラクターが立っているともいえる「登場人物」だ。
この魅力的なキャラクターにより、ぐいぐい物語に引き込まれて行く。
大楠の謎、過去に実際に起きた事件…掴みは抜群の作品と言えるだろう。
ミステリファンの心のつかみ方を知っている。


そして始まる推理パート。
長い道程だが飽きることも無い。
なにせあの変人探偵、御手洗潔が活躍するのだから。
石岡君と共に御手洗の一挙手一投足に一喜一憂しながら読み進むことができる。

だが、読み進めていくうちに少し違和感を感じたことがある。
石岡君の弱体化だ。
今までは自分なりの推理を披露して御手洗に一蹴されていた石岡君だが、今回は推理を披露することもせず、ただ御手洗の活躍を見守るばかりだ。
さらには本当にとんちんかんなことを言って御手洗を困らせることもある。
御手洗を活躍させる為とはいえ、少し残念な設定となってしまった。


真相は論理的で納得はできる…とは言い切れない。
御手洗の説明で充分理解はできるのだが、重大な謎と思われたものがただの偶然で処理されてしまったりと、腑に落ちない部分も。
そこは作者のミスリードに乗せられた私も悪いのだが。
肝心のトリックもとんでもない。
「どうしてこんなことを考え、実行しようと思えるのだ」と頭を抱えてしまう。
このトリックを看破できた者は存在しないといっても過言ではないだろう。
とにかく凄く、呆れてしまう。



ラストが少し残念だったが、そこに至るプロセスは凄く楽しむことが出来た。
御手洗が推理を重ねていく過程は、冒険小説のようで非常に面白くできている。
ただ、純粋なミステリとしては評価の下がってしまう作品だろう。
まぁ、私は楽しむことができたので満足だ。
次作は「水晶のピラミッド」
また御手洗の活躍を目の当たりにしたい。



水晶のピラミッド (講談社文庫)
本格ミステリー・ワールド2012

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