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綾辻行人「暗黒館の殺人」感想 



原稿約2600枚、文庫本にして4冊という大ボリューム。
綾辻行人館シリーズ第7弾、「暗黒館の殺人」。
シリーズの集大成ともいえる巨作だ。

この厚みに読む気すら削がれてしまいそうな一作だが、私は二週間かけて読破することができた。
その二週間の軌跡をここに書き記していきたい。



まずは簡単なあらすじ

九州の山深く、湖の小島に建つ黒一色に塗られた館、暗黒館。
当主の息子・玄児に招かれて訪れた学生・中也は、「ダリアの日」と呼ばれる宴に参加する。
その翌日、使用人が遺体で見つかった…。
18年前の惨劇との関連は?「ダリア」とは何者なのか?
時間と視点が交差する特大巨編。



まず長い。
これだけで大きなマイナス要素である。
何故ここまで長いのか、不思議で仕方がない。
この長さに意味はあるのかと聞かれたら私はこう答えよう
「特に意味はない」
本当にただ、極限まで薄めたカルピスとしか言いようがない。

必要ではない描写が多過ぎる。
登場人物もわらわら。
登場人物紹介を見たときは唖然としてしまった。
でも家系図を見るとワクワクしてくるのはミステリ好きの運命であろう。


それでも、いざ読み進めてみるとスラスラページを捲ることができる。
やはりこれには綾辻氏の描写力、構成力の大きな力があってこそなのだろう。
まぁ、私の場合は「怪しげな館」さえ登場してしまえば物語に引き込まれてしまう。

そして面白いのが「視点」だ。
この物語の要と言っても過言ではない。
気せずして騒動に巻き込まれていく「中也」と呼ばれる青年。
「呼ばれる青年」とのうがミソである。怪しさ満載である。
暗黒館に単身向かうことにした「江南」。
一夜限りの冒険のつもりが、一生に一度の稀有な体験となってしまった「市郎」。

三者の視点で物語は進んでいく。
だが、「中也」と呼ばれる青年の視点が中心。
ほかの二者はおまけ程度。

視点がコロコロ変わる作品は数あれど、これほどまでに視点の変更を強調する作品は珍しいだろう。
もちろん、この視点の移動こそが物語の謎を解く鍵になってくる。
私は解けなかった。
残念極まりない。


そして、今までの「館」の影が見受けられるのも一興。
藤沼氏の絵画や、黒猫などなど…。
シリーズの集大成と呼ばれる所以はここにある。
このシリーズの核心ともよべるものにも触れる一作だ。

シリーズのファンとしてなら読んでおくべき作品であろう。
しかし、肝心の結末が…あまり良い出来とはいえない。
少々アンフェアな部分があったり、偶然で済んでしまう事柄が多すぎたり。
ミステリーとしての出来はイマイチと言わざるを得ない。

中村青司を巡る「館」が好きな人は文句なしに満足できる作品。
しかし、綾辻行人の「館シリーズ」として、ミステリーを期待する人にはオススメできない。


さらに探偵役の島田潔も最後にひょっこり登場するくらいで、いつもの「館ミステリ」を楽しむことはできないだろう。
この長さの物語を辛抱強く読んできたのにこれは無いよ、という声が非常に多い。
まだ長く無ければ、この作品の評価は違ってきたかもしれない。

「すごく暇だ」
「ウホホのホイ」
という方にはオススメ。
シリーズ好きで読んでない方は、辛抱強く読んでみてもいいかもしれない。



ここからはいきなり物語の核心に触れます
未読の方は全力で回れ右を


まず、島田潔のワトソン役として活躍してきた江南君と、事件発生時の江南君は別人という話。
これには綺麗に騙されたと言うしかない。
一時は別人にすり替わっていると想像したものの、「江南=別人物説」を否定する描写が多くあったため、早きに捨てるしかなかった。

そしてこの「江南=別人物説」を否定する描写が、あまりにも出来すぎている。
偶然に偶然の積み重なりで、「そう導かれるのは当然のことだった」と、ファンタジックな発言までしてしまっている。


もちろん、本物江南の視点と、事件発生時の各々の視点で齟齬が発生していることには気付いていた。
「あれ、江南君のときはああだったのに…?」
と何度思ったことか。

しかし、そんなことは読み進めているうちに忘れてしまった。
それもそのはず、この作品は長いのだ
そんな細かいことはすぐに忘れてしまうほど長い。
むしろ忘れさせるためにここまで長くしたのではないだろうか。
これぞ本当の「読者対作者」の具現化である。
物語の中で起きる矛盾点を、あえて物語を長くすることで忘れさせてしまう。
とんでもねぇ。


さらに一族の真相も謎が解ける度にとんでもない形相に。
「実はあいつはあいつの子ではない」
「お前の実の父は私だ」
のラッシュは笑ってしまうほどだった。

「人間が書けない」と言われる本格ミステリに於いて、複雑な人間関係に悩む人々を描きたかったのだと思う。
しかし、肝心の犯人の犯行動機がアレではダメだ。
「人間が書けない」と言われも仕方がない。


そして「中也」の本名は中村青司。
この物語が33年前の出来事だと発覚した時点で気付いた方も多いだろう。
暗黒館で度々登場していた「影」は、実は「元ネタ」だったのだ。
ここから青司は様々な奇妙な館を作り続けることになる。

物語の「出発点」的役割も、この作品は担っている。
シリーズが完結した後に読んでみても面白いかもしれない。



暗黒館の殺人(一) (講談社文庫)
暗黒館の殺人 (上) (講談社ノベルス)
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